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家に着いて、自分の部屋に入るなり、夕夏はそのままベッドにうつ伏せで倒れこんだ。
涙は出なかった。それより今日を乗りきった安堵感のほうが強かった。
もしかすると、こういう日が来るかもしれないと思っていた。
河野先輩と正義が一緒にいる所を目撃する想像をしたりとか。
でもハードな現実は、思わぬ時に思わぬ所からやってきた。
夕夏と正義は、中学2年の時、同じクラスだった。1年間、まともな会話はしなかった。
夕夏が正義に抱いていた印象は、「山崎まさよし」と同じ名前だなあという事ぐらいだった。
正義は市の選抜メンバーに選ばれるほどバスケが得意だった。
夕夏はその頃、バスケはやっていなかったし、興味もなかった。
夕夏が正義のことを意識し始めたきっかけは、3年の時の夏祭りだった。
縁日の型抜き屋にいた正義が来ていたTシャツに、夕夏は驚いた。
「そのTシャツ、ストロークスでしょ?」
「えっ!知ってんの?」
「うん、うちの兄ちゃん好きだから。」
「うぉー、いい兄ちゃん持ってるね~。」
「まぁね。」
中学時代の正義との接点はそれだけだった。
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