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 翌日、夕夏は朝練を休んだ。  リビングでは、母恭子が出発前の身支度をしていた。   「おはよ。」 「おはよう。もうテスト前?」 「うぅん、めんどくさいから休んだ。」 「あら、そう。」  夕夏は冷蔵庫を開けようとしたが、温かいものを飲みたくなったので、お茶を淹れることにした。  もう11月だ。嫌な冬がくる。  今年の雪の量はどうなんだろう。  父和雄は冬は除雪の仕事をしているので、大雪の日ほど家にはいない。  なので、今年からは家の雪なげを、夕夏と母恭子でこなさなければならない。兄がパン職人になるため、家を出たからだ。  父和雄は、二人じゃ大変だろうと、除雪機を買ってくれた。  母恭子は喜んでいたが、体を動かさない分、寒さが堪えそうなので、夕夏は除雪機の担当にはできるだけなりたくないと、ぶつぶつ思っていた。  夕夏がお茶を淹れている間に、母恭子は、夕夏の分のご飯とお味噌汁と煮物を並べた。  煮物は昨日の残りだろう。 「あ、旬菜じゃん。今年初だね。」 「川上さんから頂いたの。今日は晩どうするの?」 「家で食べる。」 「はい。じゃあ行ってくるからね。鍵忘れないでよ。」 「いってらっしゃーい。」 「じゃあねー、ミィちゃんバイバイねー。」  母恭子は、もうすぐ1才になる猫のミィの鼻に、自分の鼻を擦り付けてから、家をあとにした。  もうすぐ雪が降る。雪が降ったら、正義はどうするんだろうか。。  雪が降る前に、正義は彼女に話しかけるんだろうか。。  自転車で学校に通えるのも、あと何日だろう。。  夕夏は残りのお茶を一気に飲み干し、食器を片付け、制服に着替えにリビングを出た。  家の鍵を閉めて、庭を見ると、シートに覆われた除雪機が、姿を現していた。  夕夏は、ひんやりした気持ちで、学校へ向かった。
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