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「分かればいいのだ。それより、散策を再開するぞ。無駄な時間を過ごした」
喧嘩は短く終了し、再び散策に戻る。
時間は四十分も経過し、残りは二十分となっていた。
がそこで、進展があった。
「おい、この部屋」
「あぁ」
開かない部屋を見付けた。
しかも中からはモンスターの気配がある。
「しかし、どうやって開けるんだ? 鍵穴もなければ、ドアノブも無いぞ」
「プレートには、リネン室と書いてあるな。開いたところで、嫌な予感しかしない」
「だけどよ、ここしかアテがないんだよな。だったら――強行突破だ!」
ナナシは足を振り上げ、蹴りを食らわせる。
だが、見えない壁に阻まれ、ドアは壊れなかった。
「ふむ。どうやら強化魔法の他に、防壁魔法も施されているようだな。しかし、その分AMが弱い……。なら、我の魔法で破壊できるやもしれん。ナナシ、ドアをとにかく殴れ」
「? どうしてだ?」
「防壁魔法はダメージが蓄積されると、防壁が弱る性質があるのだ。お前の弱い攻撃でも、少しは防壁を弱めることはできる」
「成る程。分かったぜ」
ナナシは再びドアを蹴る。
何度も蹴る。
少しでもミュシルの負担を減らす為に。
後ろではミュシルが魔法の準備を始めている。
着々と魔法力が集まり、大きな力となる。
「行くぞ、ナナシ!」
「応!」
準備が完了した瞬間、ナナシは後ろに下がる。
「《炎の化身にて、気高き聖霊。その豪腕にて、我が目の前に立ちはだかる逆境を打ち破れ》! 《イフリート》!」
魔法が発動すると、ミュシルの背後に炎の魔神が現れた。
魔神は拳を振り上げると、ドアに向かって拳を振り抜く。
防壁はいとも容易く破壊された。
「よし……探すぞ……」
ミュシルは疲れているようだが、頑張りながら部屋に入っていく。
「やっぱり………」
リネン室の中は、やはりと言わんばかりに薄汚れたシーツの山だった。
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