三話

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バームの目付きが変わった。 子供が拗ねるような目でもあり、軽蔑するような眼差しだ。 子供は遊びを楽しむ。 だから、いつも本気だ。 負けたら潔く諦め、勝ったら喜ぶ。 その間に、文句などない。 そう言われ、ミュシルは小さく溜め息を吐いた。 そして、両手を広げる。 「分かった。我の敗けだ。約束通り、何でも言うことを聞こう」 「おい、ミュシル!」 「ただし、好きにしていいのは我だけだ。後ろの男は関係ない」 「何をワケわかんないこと言ってるのかな? だって、そのお兄さんもお遊びに参加したでしょ?」 「いいや、参加したのは我だけだ。こいつは参加していない」 「………んー。まぁいいや。それじゃぁ、お姉さんの魂を、貰うね」 バームはふわふわとミュシルに近づいてくる。 ナナシはたまらず、二人の間に割って入った。 「何のつもり? お兄さんは関係無いから、そこをどいてよ」 「そうだ。そこをどけ、ナナシ」 突き放すような冷たい言い方。 まるで、自分のことのように言ってる。 確かにミュシルにとっては自分事で、ナナシは他人事だ。 だが―― 「言ったよな。俺はお前のそう言ったところが嫌いなんだっ、て。少しの間だったが、お前とは旅をした。仲間の魂を奪われるのを黙ってみてられるかよ!」 「…………はぁ。馬鹿者」 溜め息と謗(そし)り。 しかし、悪意は感じられない。 怒りも、叱りも感じられない。 呆れたような、馬鹿にしたようなものとも違う。 まるで、喜んでいるような感じがする。 そしてミュシルは耳打ちをする。 「ナナシ。お前はもう一回かくれんぼに参加して、この館から出ろ。お前なら、このかくれんぼに勝てるはずだ」 「おい、何を――」 「いいか。どんなときも、冷静さを失うな」 「ミュシ――」 ミュシルの名を呼ぶ前に、ミュシルは風の魔法でナナシを吹き飛ばし、前に出た。 「さぁ、今のうちだ!」 「はいよ!」
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