三話

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バームの手が、ミュシルの胸に突き刺さった。 「ミュシル!」 ナナシの叫びと同時に、ミュシルの体の中から白い球体が引きずり出された。 あれが魂なのだろう。 魂を引き抜かれたミュシルの体は、ゆっくりと倒れていく。 ナナシは痛む体を無視し、ミュシルに駆け寄り体を抱え起こす。 呼吸はあるが、生気を感じられない。 「生きてる……のか?」 「生きてるよ。生き物としては」 バームは魂を手で弄びながら、今のミュシルの状態について説明する。 「魂を引き抜かれても、生き物としては生きられるんだ。けど、ずっと眠ってる状態からは抜け出せない。栄養を投与し続ければ生き続けることはできるけど、魂が戻らないと目覚めることはないよ」 「だったらその魂を返せよ!」 「ヤダよ。遊びで勝って手に入ったんだから、ボクの物。だから、返す道理なんてないよ」 「お前――!」 魔法でバームを攻撃しようとしたところで、ナナシは手を止めた。 ミュシルに言われた言葉を思い出したからだ。 ――どんなときも、冷静に。 ナナシは深呼吸をし、怒りを心の奥底へ押し込む。 ミュシルは、かくれんぼに勝てと言っていた。 ナナシなら勝てる、とも言っていた。 つまり、ナナシに勝てる要素をあの会話で見つけたことになる。 このままかくれんぼに挑んでも勝てる見込みはない。 少しは考える必要がある。 「おい、お前ら……」 「何かな?」 「今から十分後に、またかくれんぼで勝負だ。勝敗の景品は、お前らが勝てば俺の魂を――いや、命をやる。俺が勝てば、何でも言うことを聞け!」 「ふふん。そんなにお姉さんの魂を取り返したいんだ……。もしかしてお姉さんのことが好きなの?」 「茶化すな。俺はただ単に仲間を救いたいだけだ」 「あははは! 分かったよ! それじゃぁ十分後にこのロビーで!」
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