三話

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そう言い残し、二人の姿が消えた。 ナナシはその場に座り込み、考える。 さっきの二人みたいに姿を消しているだけはあり得ない。 遊びに対しては真面目みたいで、動いていないのは本当だろう。 一応炙り出すために、光の魔法で部屋を照らした。 が、出てこなかった。 つまりこれは、部屋に隠れず、相手に見付からない場所に隠れていると言うことになる。 だが、そんな場所は何処にもない。 この館はかなり広いが、遮蔽物は殆どない。 遮蔽物があるのは室内だけだ。 更に、二人のどちらも見付からないと言うことは、二人が同じ場所に隠れている可能性が高い。 小さな二人とは言え、二人となれば目立つし、隠れる場所が限られてくる。 「あー、わかんねー!」 「あはは、悩んでる悩んでる!」 茶化しにきたのか、バームが天井に蝙蝠のようにぶら下がって現れた。 「何しにきたんだ!」 「あと五分ってことを教えにきただけ」 「んなこと分かってる! あの唯一生きている大時計で確認してるからよ!」 「あ、そうなの。それはゴメンねー! バイバーイ!」 終始小馬鹿にして、バームは姿を消した。 「ったく――ん?」 そこで、ナナシは引っ掛かりを覚えた。 そして、気付いた。 「まさかな。いや、賭けるには十分だ」 今はこれ以外は考えられない。 ナナシは早速準備に取りかかった。 「さーて、お約束の時間だね。早速始めようか」 「あぁ、分かった。制限時間はどのくらいだ」 「ニア?」 「半分の三十分」 「分かったよ。じゃぁ、三十分でいい?」 「あぁ。三十秒でも構わないぞ」 「見栄っ張り。そうやってボク達の隠れる時間を減らすきかな? でも、その手には乗らないよ。じゃぁ、スタートだ!」 ポン! と音を立て、二人の姿が消え、先程同様に時計が現れた。 「……………………」 ナナシはその時計を見詰め、誰に向かってか分からないが、語りだした。
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