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ウール エルデンがその女と出会したのは“ヴィンリーのbar(Vinly's bar)”の前の路上だった。
小柄でショートカットそしてジーンズ姿のシルエットを暗い夜道で見た時、ウールは彼女を少年と見紛えた。
しかし少年がそんな夜更けに酒場から出て来るはずもなかった。
もつれそうな足取りで店から出て来たその小柄な人物は肩に回した連れの男の手を煩わしそうに振り払った。
すると、その拍子にバランスを崩して斜め向かいのウールの方へ倒れ込む様に駆け寄って来る。
ウールは咄嗟にジャケットの上から左右の二の腕を支える様に掴んだのだが、勢いのついた小さな体はそのまま軽く体当たりをして漸く止まった。
長身のウールからは、ショートカットの垂れ下がった前髪の間から細く尖った鼻の先と小さな顎に口ぐらいしか見えない。
しかし掴んだ腕の感覚で女性である事は分かる。
更に体格、肌の色、顎のライン等から同じアジアの民でも遥か東方の国を推察する事が出来た。
「大丈夫ですか?」ウールは日本語で話し掛けてみる
果たして、ウールが自らの胸で抱き止めたその酔客は、遠いアジアの果て東方の国から来た若い女であった。
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