(1)更けゆく夜に ①

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ウールの日本語に反応を示したその女はしきりに何かを言おうとして来たのだが、思う様に呂律が回らない風だった。 直ぐに連れの男が来て女の華奢な両肩に手を遣り力ずくでウールから自分の方へと引き離す様に抱き寄せた。 その際に男はウールに向かって二言三言ブルガリア語で何か言った様だった。 しかしソフィアに移り住んで、もう半年が過ぎようとしているのだが、ウールは未だにブルガリア語を解せないままでいる。 そこで見当をつけて、自分は大丈夫だから気にしないで欲しいと英語で返事をすると、男は暫くウールの顔を見た後「今夜は飲み過ぎた様だ、申し訳なかった」と改めて英語で言って来た。
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