1147人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
どうやら姉は隣の部屋に閉じ込められたらしい。
外側から鍵をかけられたらしく、
「お父様、開けて!
嫌よ、私は東雲にお嫁になんか行きたくない!」
と泣き叫びながらドアを叩き付けていた。
ああ、どうして隣の部屋なんかに閉じ込めるのか。
どうせなら、奥の部屋に閉じ込めたらいいのに。
――五月蝿くてかなわない。
そんなことを思っていると、乱暴にこの部屋のドアが開けられ、息が上がった父が目を向いて飛び込んで来た。
上等のスーツ姿に整えた口髭という出で立ちは、いかにも文化人気取りで滑稽に映る。
「今、弥生を隣の部屋に閉じ込めて来た」
肩で息をしながらそう告げる父に、
「分かってますよ」
と無表情でそう答える。
「まさかと思うが睦月(ムツキ)、逃がすような真似はするまいな」
「僕が?
……そんな面倒なことはしませんよ」
「弥生は我が間宮家を救う最後の希望なんだ」
「分かってますよ」
分かっているから、早く出て行って欲しい。
そんな空気を全開にしながら書に目を通す。
最初のコメントを投稿しよう!