第1話 没落華族 ―睦月―

4/38
1149人が本棚に入れています
本棚に追加
/38ページ
姉が最後の希望。 そんなことは今更、念を押されるまでもなく分かっている。 明治時代に祖父が国家への勲功によって華族となった、所謂『新華族』と呼ばれる我が間宮家は、 真の華族には時に蔑視される成り上がり華族であり、そんなコンプレックスを埋めるかのように自分を『一流』に見せたがることに懸命で、そして浪費家であり、 そうした家風はやがて家計を圧迫し、今や借金を抱えた名ばかりの没落華族となっていた。 そんな間宮家に救いだったのは、双子の姉・弥生の類稀なる美貌だった。 鹿鳴館のパーティで姉の姿を遠目に見た、富豪の東雲琢磨(シノノメタクマ)が彼女を見初め、 借金のすべてを肩代わりし、今後も豊かな生活を約束することを条件に婚姻を申し込んできた。
/38ページ

最初のコメントを投稿しよう!