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「お父様、出して!ここから出して!
あの人に会いに行きたいの!」
泣くように叫ぶ姉の声。
長い間聞いていたら、慣れて来るものなんだろうか?
古い屋敷だ。
ドアを叩き付ける振動が伝わってくる。
姉の嗚咽さえも、まるですぐ側で聞いているかのように―――。
「……睦月、そこにいるんでしょう?
お願い、私をここから出して。
もう二度とこの家に戻らないから。あの人と遠くに逃げるの」
ヒクヒクと泣きしゃっくりを上げながら、そう漏らす。
彼と逃げるって?
そんなことが本気で出来ると思っているなんて、馬鹿馬鹿しい。
もし逃げられても、すぐに連れ戻されるのが関の山。
いかにもお嬢様的な手前勝手な発想だ。
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