第1話 没落華族 ―睦月―

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思わず足を止める。 お前がつらい思いをしたなら、自分にはそんな思いをさせるな等と、本当に手前勝手なお嬢様思考だ。 だけど、そんな至極我儘で純粋で真っ直ぐな思考が羨ましく思えた。 彼女のような気持ちでいられたなら、あの時、自分は……。 そう思うと切なく胸が詰まる。 あれから何もかも諦めて生きて来た。 そう……自分は姉のように足掻くことすらもできなかった。
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