第1話 没落華族 ―睦月―
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ギュッと拳を握りしめて、一階に向かう。 くすんだ朱色の絨毯を踏みしめるように歩き、大きな階段を降りる。 木彫りの手すりに手をかけて、足早に書斎に向かった。 そこにこの家のマスターキーがあるからだ。 父は自分が姉を逃がすなんて微塵も思っていない。 従って自分に対して鍵を隠すような真似はしていなかった。
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