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その後、公家に頼まれた翻訳の仕事の為に書斎にこもっていると、ドアをノックする音が響いた。
ああ、お茶の時間か。
そう思い書類に目を向けたまま「どうぞ」と言い、辞書を開いた。
「コーヒーをお持ちしました」
ハスキーな声に驚いて顔を上げると、そこには彼女の姿があった。
嬉しさに頬が熱くなる。
「驚いたな、メイドが入って来たかとばかり」
ドキドキしながらそう告げると、彼女はクスリと笑った。
「この部屋で淫らなことをしようと思っていたとか?」
驚いて言葉が詰まった。
まさか、彼女の口からそんな言葉が出ようとは。
確かに、この書斎でメイドと淫らな行為に及んだことはある。
そのことを彼女に想像されたことに決まりが悪くなり言葉を詰まらせた。
やはり昨夜のことを怒っているのだろう。
「すまない、冗談だ。
とはいえ、昨日の今日では冗談にもならないか」
彼女は小さく笑ってにコーヒーを置いた。
その様子にもう怒っていないことにホッと息をついた。
それにしても―――
「お前は面白い女だな」
心からそう告げる。
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