第二話 想い ―琢磨―

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すると彼女はピクリと眉を顰めて、小さく息をついた。 「実際、そうなのかもしれないな。間宮弥生は君に買われただけなのかもしれない」 そう告げた彼女に、少し驚いて動きを止めた。 「だが、それでも二人は『伴侶』になるんだ。 それは人生を共にするということ。君は一生、人生のパートナーを金で買ったなんて言い続けるつもりか? より良い家庭をと思うならば、最低限のルールも必要だろう。 時に浮気もありえるのかもしれない。 だが、これは明らかにルール違反だ」 そう言って真っ直ぐに見据える、それは美しい瞳。 バクバクと鼓動が打ち鳴らす。 なんだよ、この女? 「君がやっていることは、子供のあてつけと一緒だ。 もう少し大人になるように。 そして今日のところは見なかったことにしよう。 まさか行為を途中でやめろとまでは言わない。そのまま続けていい」 そう言って颯爽と寝室を出て行った彼女に、言葉も出なかった。 夫になる男が他の女を抱いていて、それを目の当たりにしながら少しも動じずに自分を嗜め、 そしてそのまま続けていいと普通に言い放って部屋を出て行った。 信じられない。 ベッドで息を荒く全裸で横たわる女よりも、颯爽と出て行った彼女の姿が脳裏に焼きついてならない。
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