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再び唇を合わせて来た彼を抵抗もせずに受け入れる。
煙草とコーヒーと高級なオーデコロンの香りがする。
口内をまさぐる舌に奇妙さを感じていた。
こうして、女を落とすのだろうか?
こうした行為で女性は男に夢中になるのだろうか?
よく分からないのは、自分が男だからなんだろうか。
唇を離し、またこちらを見下ろした彼を見詰め返すと、彼は小さく笑った。
「ここまで冷静な表情を貫かれると、逆にそそるな。
女の姿をしているお前より、今のお前の方が美しく感じる」
そう言って頬に手を触れる。
本当に、このままここで淫らな行為に及ぶつもりなのだろうか?
「……こんなことを言える立場ではないのは重々承知の上だが」
そう口を開くと、彼は、なんだ?という様子を見せた。
「昨日の今日だ。
今ここでこれ以上の淫らな行為に及ぶのは正直、勘弁して欲しい。
少し時間をくれないか」
そう告げると、彼は大きく目を開いたあと、吹き出すようにして笑った。
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