第三話 露見 ―睦月―

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“面白いこと” それは一体なんなのか。 その疑問はすぐに解けた。 綾部邸のパーティに出席していた間宮家当主、そう我が父は、男の姿に戻り東雲琢磨と並んでいる自分の姿を見るなり、大きく口を開けてワインをダラダラと流した。 タキシードに流れるワインを見ながら、 「飲んでいたのが白ワインで良かったですね」 と平静に告げると、父は口を拭おうともせずに勢いよく胸倉をつかんで来た。 「睦月、お前、どうして」 文字通り顔を真っ赤にさせて、今にも頭から湯気を出しそうな勢いで声を出す。 「露見してしまいました」 と告げると、今度はみるみる顔が蒼くなる。 成程、面白い姿だ。 そう思いながら観察していると、自分の背後に立っていた琢磨がニッコリ笑って父に歩み寄った。 「事情は睦月君に聞きました。 それで、弥生さんの行方は?」 落ち着いた口調でそう尋ねた琢磨に、父は目に見えるほどに額から汗を流し、 「い、今、必死で捜索中でして」 と流れる汗を拭いながらそう言った。
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