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「分かりました。
こちらも彼女の行方を捜すことにしましょう。そして彼女が東雲に来てくれる日を待ってます」
そう言って優雅に微笑んだ琢磨に、父は感激に目を潤ませた。
「なんて、素晴らしい。
弥生は本当に馬鹿な娘です。あなた様に一目会えば気が変るだろうに」
その言葉には同感だった。
姉もきっと、彼を前にしたら気持ちも変わるだろう。
こうして見ているとすばらしい好青年にしか見えない。
そう思っていると彼は急に冷酷な表情を浮かべ、
「それでは間宮殿。
あなたは今、パーティを楽しんでいる場合ではないとわたくしは思うのですが?」
と父を見据えた。
父は仰天したように目を見開き、
「ええ、勿論、今すぐ帰って娘探しに尽力します」
と逃げるようにバタバタと会場を後にした。
不敵に微笑む彼を見ながら、
前言撤回、彼は決して『好青年』などではない、と肩をすぼめた。
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