第三話 露見 ―睦月―

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父の姿が見えなくなった後も、しばらくパーティに参加していると、この家の当主・綾部氏が姿を現した。 スーツ姿に口髭の中年の男性。 父と同じようなスタイルながらも滲み出る気品は、父とはまるで別世界のものだった。 「琢磨君、今回の仕事は本当に素晴らしかった。 あんなに美しく訳してくれるとは感激だったよ」 そう言って嬉しそうに目を細める綾部氏に、琢磨もそれは上品な笑みを返した。 初めて庭園で出会った時の、あの笑顔だ。 爪の先まで上流階級の匂いをさせる振る舞い。 暴君で性悪だが、こうした気品漂う面も持ち合わせている。 それは彼の複雑な生い立ちがそうさせたのだろうか? 一歩下がったところで観察していると、 「あの仕事は彼が」 と、こちらを見た。 すると綾部氏は目を輝かせながらこちらを見て、「彼は?」と琢磨に確認する。 「間宮氏の長男、睦月君です。 今、仕事を手伝ってもらっていまして」 「君が間宮君のところの長男か。 公の場に出てこないが、素晴らしく優秀で美しいという噂だけは耳に届いていた。 いや、噂以上の美少年だ。 英語は得意なのかい?」 目尻を下げながら、そう尋ねる。 「得意というほどではありませんが、多少は」 そう告げると、そうかそうか、と彼はしきりに嬉しそうに頷いていた。
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