第三話 露見 ―睦月―

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――――佐和……。 何度も思う。 手紙を受け取ったときに、すぐに君の元に駆け寄って、何もかも捨てることが出来たならと。 初めて気付いた自分の想いに、ただ呆然とするばかりで、何の思考も働かずに悪戯に時を過ごした。 あの時に、あの時に、と何度も何度も繰り返しながら。 「それから、僕は更に抜け殻のようになった。 愛する人の為に何一つ出来なかった自分だ。誰かを愛する資格等ないと」 どうしてこんなことを話すのか。 誰にも打ち明けたことがないのに。 涙が止まらない。
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