795人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
威風堂々としたその美しい姿に、他の者を圧倒させるような雰囲気は、流石は財閥家の当主と思わせられる。
こうして対峙しながら、少し奇妙な気分になっていた。
そう、不思議な気分だ。
このどこから見ても、女しか好まなそうな男が自分を組み敷いていたなんて、こうして対峙している今、性質(タチ)の悪い夢でも見ていたような気分になる。
そう思いながら、彼を見たまま「おはようございます」と会釈をした。
使用人達が目だけでこちらを見て、何か言いたげな表情を見せていた。
彼は小さく笑い、
「おはよう、睦月」
と手を組んだ。
本名で自分を呼んだ。
見せる優雅な笑顔も、何か企みを含んでいるように見えてならない。
最初のコメントを投稿しよう!