第四話 背徳 ―琢磨―

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「悪いな、ちょっと考え事をしていた」 そう言って目頭を押さえた。 「お疲れのところ申し訳ございません。 間宮が雇った探偵の話を伺ったところ、間宮が調査費を出し渋るが為に、仕事が思うように進めることができずにいるとのことでした」 書類に目を向けながらそう告げた彼に、思わず笑った。 「そんなことだろうと思ったよ。 分かった調査費はこちらで持とう。 早急に間宮弥生の消息をつかむよう動くよう指示してくれ」 「畏まりました」 ペコリと頭を下げて書斎を出て行こうとする使用人の背中を眺めながら、 「それから、もうひとつ仕事を」 と声を上げた。 「はい」 振り返りこちらに戻ってくる使用人に、ペンを取り紙に用件を走り書きして手渡した。
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