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「報告というのは、お前の言っていた佐和という娘のことだ」
そう告げた彼に、鼓動が強く打ち鳴らした。
「佐和がなにか?」
「どこに嫁いだのか調べた。
もし、まだ想っているなら、略奪でもいい一緒に海外に連れて行ったらどうだ?
俺が協力する」
そう言って書類を差し出した。
バクバクと心臓が打ち鳴らす中、その書類を手に取る。
そう、彼女がどこに嫁いだのか、家の者は決して教えてくれなかった。
下町の少し大きな工場の息子の元に嫁いだらしい。
上流階級ではないが、裕福な家のようだ。
佐和を連れ出して、共に海外に行く。
そんなことが本気でできると思っているのだろうか?
「君の心遣いはありがたいが、あまりにも無理な話だ」
そう言って書類をデスクの上にそっと戻した。
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