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使用人が書斎から出て行くなり、少し力が抜けて革張りの椅子の背もたれに身を委ねた。
煙草を咥えて火をつけ、その煙が上昇していくのを眺めながら、自分がまるで病にかかったように熱っぽいことに苦笑した。
―――寝ても覚めても考えている。
まるで病気だ。
パーティの席でも、睦月に馴れなれしくする輩に苛立ってならなかった。
それよりも激昂したのが、そんな輩に向けて、睦月が極上の微笑みを見せたこと。
自分は一歩離れたところで、その美しい微笑に魂が抜けるように見惚れてしまうことを感じながらも、その微笑みが自分に向けられたものではないことに憤りを感じた。
嫉妬を露にする自分を前に、どこまでも飄々としている彼の姿も憎らしく、そしてそんなところも愛しくてたまらないと感じてしまっている。
本当に病気だ。
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