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「オラアァッッ!!」
獣かなにかと勘違いしてしまいそうな野太い声が聞こえると同時に私が座っているデスクの向かい側にある扉が「バキバキバキッッ!」と、悲鳴をあげた。
「おいおいおいおい!こりゃあ、どういうこった?なぁ?東条 京谷さんよぉ!」
そんな、怒鳴り声と共に“室内に”倒れてきた扉から姿を表したのは熊と見間違ってしまいそうな大男と、その後ろからいかにも小物です。といった風貌の男たち。
「やれやれ、あなた方はもう少し静かにできないのですか?」
まったく、と大男に東条京谷と呼ばれた男は扉の倒れた振動でずれてしまった眼鏡を外し、どこからか取り出した布でレンズを拭き始めた。
「やかましい!俺らがどんな話(なし)つけに来たかわかっとんじゃろがい!」
大男は額に血管を浮かべ、まともな精神をしている人間ならば震え上がるような声と顔で東条に対して怒気を撒き散らす。
しかし、その当人である東条はそんなこと関係ないと言わんばかりにけろっとした顔で眼鏡を拭いている。
「えぇ、もちろんわかっていますよ。」
「ほお、んなら教えてもらおうやないか?何で“取引先に渡すはずやった金をどこの馬の骨ともわからんガキにやったんや?”」
その言葉を聞き東条は、ふふっと相手を小馬鹿にしたような含み笑いをし、ようやく拭き終わったのか眼鏡をかけると「決まっているじゃないですか」と、口を開いた。
「だって、その方が面白そうでしたから。」
それは、長い沈黙だった。大男からは、あからさまな怒気が膨れ上がり、握りしめた拳が徐々にぷるぷると震え出す。
そして、そんな中でも常に笑顔な東条という異様な空間に脅しに来たはずの大男の取り巻き達が怯えだした。
そして、五分ほどたった時とうとう大男が爆発した。
「ふっっっっっっっざけんなやああああぁぁぁぁああ!!!!もうええわ!!この事は貴様の命で責任負うてもらうぞ!おい!お前らドス持ってこい。お前とお前はこの悦楽主義者を押さえとけ!」
「へい!」という声と共に男たちが動き出す。
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