第一話

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『"穴が開いている"というのは正しい認識だ。救世主。 お前は先ほど言ったな?"まるで死後の世界のようだ"と、そして私が半分正解、半分不正解だと言った。それはなぜだと思う?一体何が"正解で"何が"不正解"だと思う?』 白い靄の急な問いかけに私は自信をもって答えた。 「恐らくではありますが、"正解"はここは死後の世界であると言うこと。"不正解"は死後の世界ではありますが、死人すべてが来れるわけではない。と言うことではありませんか?」 ここが本当に死後の世界であるならばこの先の見えないほどに広く、白い空間に"私一人だけ"と言うのは明らかにおかしい。 世界中では秒単位で人が、いや、人以外の動物たちも無くなっているというのに、ここに居るのは最初から私一人だけ。 日本人の考える死後の世界が間違っているだけという可能性もあるが、その場合純日本人である私には考えようもない。 『あぁ、そのとおりだ。ただ、ここに来たのは後にも先にも救世主、お前だけだがな。』 「私だけ?でしたらここは一体なんのために作られたのですか?・・私のためだけに作ったということはさすがにないでしょうし。」 『ここはな、世界と世界の狭間、調律する世界、数えきれないほどにある世界と世界を移動する際に通る場所だ。だが、輪廻転生、生きるものは死に、死んだものは一から生まれ変わるそのシステムはあくまで"その世界の中で"繰り返されるのだ。故に普通はここには来ない、否、これないと言った方がいいだろうな。』 白い靄は『なぜなら』と続ける。 『この、"狭間の世界"は特殊な場所。この世界からいきたい世界に穴を開けていくことは可能だが、他の世界からこの世界に来ることはできないのだ。一方通行。一度穴を閉じてしまえばそれで終わり、こちらから開けないかぎりは戻ることは叶わない。そしてそれは"神"と呼ばれる私でも同じことだ。』 なるほど・・・。やはり、世界は広いですね。いや、この場合は世界は"多い"の方がいいのでしょうね。 事実、数えきれないほどに存在しているそうですし。 「世界を渡る前にまだいくつか気になることがあるので質問してもよろしいでしょうか?」
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