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車はやがて東雲邸に到着し、睦月と共に車を降りて広い庭園を散歩するように歩いた。
月明かりの下、咲き誇る花々美しく睦月は少し嬉しそうに目を細める。
「ここの庭は昼と夜では、別の顔を持つ。昼は健全に美しいが、夜はそれは幻想的になるな」
そう漏らした彼に、
まるでお前のようだな、と心で返した。
何も返答せずに睦月を見ていると、睦月はクスリと笑ってこちらを見た。
「まだ、怒っているのか?
君は本当に訳が分からない暴君だな」
少し楽しげにそう告げる。
その姿に愛らしさを感じながらも、今も胸に残る面白くなさに顔を背けた。
「―――睦月」
そう声を上げると、何も答えずにこちらを見た。
「知っての通り俺はイライラしてるんだ。なんとかしろよ」
お前は俺のものなんだろう?
そう告げて、彼を見据えた。
その言葉に睦月はキョトンと目を開いたあと、
「なるほど、僕に君の機嫌を取れと」
と言ってクツリと笑った。
何が可笑しい!
と声を上げそうになった時、
「分かったよ、それじゃあ目を閉じてくれないか」
と妖しく微笑んだ。
その言葉にバクンと鼓動が跳ね上がる。
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