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翌日、睦月と共に自家用車――大正6年式の三菱A型に乗り込んで下町に向かった。
コートにハットをかぶった睦月は後部座席で不機嫌そうに腕と脚を組んでいた。
「わざわざ、付き合ってやっているというのに、珍しく不機嫌そうだな」
不機嫌なその表情が可笑しく感じられながらもそう尋ねると、彼は呆れたように息をついた。
「これから下町に行って、遠巻きに彼女を観察するというのに、こんな高級車で向かうなんて街中の視線を集めたいと言っているようなものだ」
そう言って頬杖をついた睦月に、成程と笑った。
「それじゃあ、少し離れたところに車を停めて、歩いて向かうことにしよう」
愉快に思いながらそう告げると、睦月はフッ…と微笑んだ。
「そういう君は随分ご機嫌なようだ」
「そうかもな」
こうして出掛けられることが、楽しく感じられてならない。
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