1784人が本棚に入れています
本棚に追加
大崎に向かい、佐和が嫁いだとされる町工場(こうば)から少し離れたところに車を待機させ、徒歩で向かった。
長い煙突が建ち並び煙を出す光景と、賑やかな町人の姿が目に入る。
美しくはないが、勢いと活気に満ちた町。
「あそこが、その機械工場だな」
ここから見える古く大きな工場を指した瞬間、十才前後の少女が真っ赤な浴衣を着て、建物から笑いながら飛び出す姿が目に入った。
その少女に続いて、温和な顔立ちの妊婦が少女を追い駆けるように姿を現わし、
「ほら、あやちゃん!
その浴衣はまだ仮縫いだから待ってちょうだい」
と声を上げた。
最初のコメントを投稿しよう!