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「だって、早くみんなに見せたいんだもん。
佐和ちゃんが縫ってくれた浴衣!」
「ちゃんと完成させてからよ。
ほら、逃げちゃ駄目」
そう声を上げ再び少女を追い駆けようとする彼女の手を背後から青年が優しくつかみ取った。
「そういう佐和も、お願いだからその身体で走り回らないでくれよ」
必死の形相でそう言う青年に、「やだ」と彼女は頬を赤らめ、大きなお腹に手を当てていた。
それは明るく、そして幸せな光景だった。
その様子を遠巻きに眺めながら、冷汗をかくような気持ちで、そっと睦月の方を見た。
睦月は柔らかく目を細めて、微笑んでいた。
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