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屋敷に戻り、睦月は無言のまま書斎の窓から庭を眺めていた。
そんな彼の姿を見詰めながら、かける言葉が見付からずに弱りきり、沈黙を紛らすように煙草に火をつけた。
椅子の背もたれに身を委ね、ゆっくりと脚を組みながら睦月を見詰める。
平静な表情ながらも、憂いを秘めた瞳が物悲しく切なさが襲った。
「―――辛かったな」
思わずそう漏らすと、彼は物思いから覚めたように少し顔を上げ、ゆっくりとこちらを見た。
「気を遣わせたな」
そう言って目を細め、また窓の外を眺め、自嘲気味に微笑んだ。
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