第1話

4/4
前へ
/4ページ
次へ
例えばわざと私の前で携帯電話で話したり 携帯を持っていないのを知ってて 番号やメールアドレスを聞いてきたり、 壊れた携帯をあげると言ってきたりする。今は中学生でもほとんどの子が持っている 高校になると100%といってもいいくらい みんな携帯を持っている。 阿波野には携帯も買えない貧乏家庭 とまで言われたこともあった。 私は反論する勇気もなければ 言い訳の言葉すら出なかったが 内心悔しくて、悲しくて、 ケータイさえあればこんなにイジられる ことはないし惨めな想いだって しないで済むのになあって思っていた。 だからやっと携帯を手に入れた昨日は 机の上に立ってクラス全員に 自分の携帯を見せつけたい想いだった。 勿論そんなん勇気はないのだけれど…… 生まれて初めて自分の携帯が 持てたことが嬉しくて嬉しくて 今日は一日中用もないのに 携帯を取り出しては眺め、 少しでも汚れていれば 息をかけてハンカチでふき、 無意味に蓋をパカパカと開け閉めしては お金がかからない範囲で 色々な機能を試した。 これでもうイジられることはないし、 平穏無事な高校生活を送れると 思っていた。 だけどケータイデビューしたことが 阿波野に知れると奴はすぐに メールアドレスだけを聞いてきた。 それがこの『招待状』を送るためだ。
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加