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辺り一面の焼け野原。
少し見回すだけで、足や腕など体の一部がどす黒く変わった人間がみんな徐々に土に還ろうとしているのが分かる。
「さて、ここら辺なんだけどな……」
正直、僕もこの手の戦場って奴は得意じゃない。
煙臭い空気に、人々の呻き声、鉄の匂い。
それになにより、そこら中にごろごろと転がる死者。
いくら見ても死体ってものは慣れない。
というより、慣れてしまったら色々駄目なんじゃないかな、と思う。
そう思えるあたり、一応まだ正常の領域に片足突っ込んだままなんだろう……あの人よりか。
「うーん……もう少し待ってみようかなあ」
あんまり長くここにいると僕もこの流行病――確か「ペスト」だかなんだか――にかかってしまいそうだし。
確か空気感染はしないはずだから、大丈夫なんだろうけど……。
黒焦げた切り株に座りながらそんな事を考えていると、フラフラと、とても頼りなく揺れる人影が視界の隅に映った。
小一時間ほど待たされたが、ようやく待ち人が現れたらしい。
僕は重い腰をあげるとその人影に近づいていった。
「やあ」
声をかける。
するとその影はビクンと後ろに大きく跳ねた。
どうやら驚かせてしまったらしく、彼女は小さく震え出した。
「ああ、ごめんごめん。驚かせるつもりは無かったんだ。ついでに言うと、君の敵でもない」
信じられないかもしれないけどね、と僕は笑う。
噂では聞いていたけど、実際に間近にしてみると、それは本当に華奢な少女だった。
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