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「それでですよ。この帰還の方法はどうにかならないんですか。毎回毎回いきなり眠くなって、成すすべなくその場に倒れちゃうんですけど。今回はまだ柔らかい地面の上だったから良かったですけどね、もしこれが硬いコンクリートとかだったら、頭打って大怪我なんていうのもありえるかもしれないんですよ? それに……」
「ああ、うん、分かった、分かったよ。検討はしとくよ。期待に応えられるかどうかは保証しかねるけど」
「また検討はするけど実用はしない、ってパターンですか。前もありましたよねそんなこと。確か……」
「ええい、待て待て、分かった、私が悪かったよ。なんだい、今日は。仕事をこなしてきたばっかりなのに随分元気じゃないか」
「もう慣れてきましたよ。こんな小間使い」
そう言って、僕は所狭しと立ち並ぶ本棚の隙間で陽射しを浴びているソファに腰掛けた。
この座り心地の良いクリーム色の長椅子は、初めてこの本棚でぎっしりの埃っぽい大図書館に入った時から、僕のお気に入りなのだ。
「小間使い……か。ふふ、大分板に付いてきたみたいだね」
そう言って、この図書館の主は、嬉しそうに手元の純白のカップに入ったストレートティーを一気に飲み干す。
珍しく今は、肩くらいで切り揃えている黒髪に、黒縁眼鏡に黒のカジュアルなドレスといった、ポップな色合いが好きな彼女とは思えない格好をしていた。
もっとも、彼女曰く「少し置きに服を着替えないとなんだか落ち着かない」らしいので、しばらくしたらまたいつものようなキュート路線な見た目になっていることだろう。
どんな服を着ても大概似合ってしまうあたりが、彼女の素の美しさを物語っている。
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