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「今日何で帰るの?バス?迎え?」
身長180センチもある彼が、
いかにも気まずそうな雰囲気を醸し出しながら尋ねた。
「…バス。」
堪えようとしても頬を伝って止まらない涙を流して彼女は答える。
「そっか。俺も。バス停まで行こうよ。」
彼女は涙を隠すようにハンドタオルで顔を覆い、
ゆっくり歩きだす彼に続く。
「悲しくないの?」
タオルが壁になり、もごもご何を言っているか分からない。
彼女は気持ちの整理が出来ないまま行き場のない想いを口にする。
「…悲しいよ。」
彼の声のトーンも低い。
「・・・。」
聞こえてくるのは道路を行き交う車の音。
反応を示さない様子から、
彼女の質問に意味はなかったのだと彼は理解した。
「俺たち、終わりだね。」
彼の言葉によって終止符を打たれた実感を
彼女はようやく感じた。
そう、私たちは終わったのだ―――――。
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