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目覚めると、そこは見たこともないベッドの上だった。
まだ眠気の失せない脳みそをフル回転させる。
しかし、考えうる限りの可能性は否定される。
非現実的なモノ以外は。
あー、これはもしかするとテンプレ乙の展開か。
電子書籍をよく読むゆえの、非現実的な答え。
あってるはずがない。
と、思うものの、それ以外の可能性は浮かばない。
「目覚められましたか」
リン、として響くような─────例えるならば鈴。
鈴のような声。
その方向に顔を向けると、
それはまぁ!見たこともないような美女がおりました。
茶色の髪は肩に絡んで大人の女性を思わせる妖艶さを醸している。
その顔は全体的に整っていて、童顔なのに妙に大人っぽい。
結果、惚れてまうやろー!(笑)
うーむ、テンプレな展開に一歩前進してしまったぞ。
「あなた、お名前は?」
うっわー、美女に名前訊かれちったわ。
やべーわ、死んでもいいわ。
「武中優也です」
「そう、珍しい名前ね。
私はマリカ・ロードラン。
よろしくね、ユウヤくん」
そう言って、彼女は手を差し伸べた。
え?
あ……握手か?
「よろしくお願いします。マリカさん」
手を握ると、マリカは少し驚いた表情をした。
「あら、いきなりファーストネームで呼ぶなんて大胆ね」
ファーストネーム………、まあ、名前聞いた時点で思ってたけど、予想どおり、ここは日本ではないどこか、だ。
そして俺は日本語で喋ってる。
日本ではないどこか、で、日本語が通じる…………これは異世界としか考えられないな。
今の状況からして。
そして俺は、用意していた言葉を打ち出した。
「それは貴方も同じですよ。
僕のファーストネームはユウヤですから」
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