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ふわっと生ぬるい風が水色の彼女の長い髪を靡かせた。
そう、久々にこの事務所の入口のドアが開いたのだ。
「DorA事務所へようこそ。まあ、社交辞令だけ言っておこう。ほら、そこのドア閉めてさっさと帰れ。」
この男、仕事をしないクズ野郎とも呼べるだろう。
だが、こうなるにも理由がある。
「久々ですね。“Vague”。それとも、“hermit”と呼びましょうか。」
そのドアを開けたのは、ピシッとスーツを着こなし清潔感溢れる男。
「そんなピシッとしたところで、カナには振り向いてもらえないぞ。」
「仕事の話です。」
「今日は、生憎パチンコに行ってその後ちゃんとした探偵の仕事が入ってるんだ。悪いな他を当たってくれ。」
はっきり言って、会話が全く噛み合ってはいない。
だが、この男がくる時は大抵こんな感じになる。
「アル、ちゃんと仕事をしましょう。でなければ、お金は入りません。」
「カナ。お金はどうにでもなる。こいつの依頼ははっきり言って面倒だ。」
「それは否定はしませんが、お金はどうする気ですか?」
「盗む。」
「仮にも、組織員の前で言う台詞じゃありませんよ…。ましてや探偵の台詞じゃないですよ。」
カナは、頭を抱え溜め息をつく。
「何を言ってるんだ!カナ!ここに組織員なんているわけないじゃないか!」
「じゃあ、そこにいるスーツをきた男の名はなんですか?」
「ただの会社員Aだ!」
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