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「御園さん、落ち着いてください。大丈夫ですから」
もしかして私がパニックになっているように見えたのだろうか。
長瀬恭は私を落ち着かせようと、肩に触れる。
まさか。こんなことで取り乱すなんて。ありえない。
勘違いだけれど、その優しさに免じて、受け入れておくとするわ。
彼は私に向き直り、じっと見つめてきた。
逸らせない。その力が、彼の瞳にはある。
「御園さん」
「……はい」
「もし、この案件で何かあれば……僕に相談してください」
「えっ……」
「一人で抱えるのは辛いでしょう?」
にっこり、笑う長瀬恭。
それはとても、魅力的な笑みだった。
私の瞳は潤んだままだ。演技は解いていない。
けれど、その笑顔にあてられて、勝手に頬が紅潮するのを感じた。
……もしかして。
ものすごい、人タラシなのかしら。長瀬恭は。
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