第3話

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  遠慮がちに、けれど必死さを表すその指先に力を込めて。 長瀬恭の腕へ、胸へ、その手を伸ばした。 きちんと受け止めてはくれているけれど、長瀬恭は抱きしめ返してはこない。 もちろん、引き剥がしもしない。 私は彼の動きを、突然のことに反応できていないのだろうと解釈した。 きゅっと、指先に力を込めた。まるで彼の体しか頼るものがないかのように。 ……上手くいったわ。 無防備な、涙混じりのスキンシップ。 これが男女間の関係において、どれだけの役割を果たすことか。 少しの間をおいて、長瀬恭の喉が震えた。 「御園さん、落ち着いてください」 「……っ、でも……っ」 彼のシャツを握る私の声は、切迫したようにしか聞こえないはずだ。 我ながら完璧だと褒めてあげたいくらいだわ。 ……と、満足している私の肩に、長瀬恭の手が触れた。 抱きしめ返してくれるのかしら、だとしたら幸いね。 なんて思惑は、あっさり外れてしまった。 .
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