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「……仕事の現場で、こういうのは……あまり良くないと思います」
「あっ……」
困ったように眉を下げる長瀬恭の言葉に、私はさも今気がついたかのように反応する。
そんなの織り込み済みよ、けれど……ここで粘って好転することはなさそうだ。
私は足に力を入れ、自力で立った。
そしてそそくさと目尻を拭って彼に謝る。
「私……すみません、取り乱してしまって……」
頬を手で覆い、恥ずかしさを堪える仕草も付けた。
長瀬恭は穏やかに微笑み返してくれる。
「大丈夫です、気にしてませんから」
そう、そうよね。むしろラッキーくらいの出来事よね、彼からすれば。
こういう触れ方を嫌がる男はいない。少なくとも私が出会った男の中には。
仕事場だから固辞しただけ。場所が悪かったのよ。
……でも。
これからは違うわ。いつどこでだって彼と繋がれる。
だって私は、『相談』という名の手段を手に入れたのだから。
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