変化

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変化

何度繰り返しただろうこの言葉、行為、時間。 昨日と今日の違いを探すのが難しい程にあっけなく仕事は終わった。 時刻は6時過ぎ。 夏だけあって外はまだ明るい。 何も変えられなかった。 頭をよぎる。 全ては変わらない。 自分が変えようとしない限り。 悲鳴が聞こえる。 それを知らない振りをする自分。 誰も聞こうとはしない。 その悲鳴を。 少し眠ろうと思った。 今日はやけに疲れたみたいだ。 そしていつものように瞳を閉じた。 騒音。 いつもの騒音。 目覚めの合図。 朝か…。 そんなに長く眠ってしまったか…。 時計を見る。 9時。 朝? 外は暗い。 夜? 街はうるさい。 絶叫と悲鳴とが聞こえる。 閉め忘れたカーテン。 そこに光はない。 私はこの生活に変化が欲しかった。 誰もが望んでいた事だろう。 これ以上にない利便性という幸せを手にいれたはずなのに。 すすけた埃まみれのベランダに身を乗り出した。 道路に沢山の人々が上を見上げている。空を見上げては何かを叫んでいる。 何かがおかしい? UFOでも飛んでいるのか? 私もその類の話などは好きだったので夜空を探した。… 美しい星。 おかしな点は何も見当たらない。 何を不思議に人は叫んでいるのだろう… 気はなったがすぐにどうでもいいやと言うになり布団に潜りこんだ。 次に目が覚めるのは朝か。変わらない毎日に苦しみながらも乾杯。 おやすみ。 … … … … … … … 気付いた瞬間私はベランダから身を乗り出していた。道路の人、向かいのマンション、全ての人が夜空を見上げている。 私も同じように。 それはそうだ。 有ったはずだ。 確かに有ったはずだった。 夜が暗いのは当たり前だ。誰もが不思議と暗闇の深さなんて気にも止めた事はなかった。 今日は違う。 明らかに違和感がある。 闇。 本当の闇。 夢中なんてものじゃない。絶叫や悲鳴が聞こえて当然だ。 必死になって探した。 有って当たり前のモノが無くなるとこんなに不安になるのだと初めて知った。 全ての人の祈りは少しだけ空を泳いで地に落ちた。 この日、月がいなくなった。 昨日の月が最後のさよならを告げていたんだ。 いつものように いつもの淡い笑顔で。
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