待っていた収穫祭

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風車が回る 実りの森を越えた先より 吹き渡る風を雄々しく受けて 粉挽き番の少年は まだ見ぬ大地の夢を見る 異国の英雄に思いを馳せて 明日は待っていた収穫祭 伸びた背丈にぴったりの衣装と 鮮やかに村を埋め尽くす 花飾りの準備も万端 刈り入れの済んだ麦畑には ゆったりと闊歩する農耕馬たち 老いた農夫は 感慨に浸り息を吐く 薄暮の月も白く凍える 深まる秋の風は冷たくとも 人が集えば温かい 竈で麺麭(パン)を焼きましょう 空腹を満たせば微笑みが生まれ 笑顔の輪は新たな幸福を連れて来る 心を込めて焼きましょう ベリーのジャムも鍋一杯に 明日は皆が待ち望む収穫祭 薔薇色の夜明けと共に 音楽隊が笛を奏でれば 鄙びた寒村にも祝福は降り 賑やかな幸せが木戸を叩く 少年の記憶にも 老人の昔語りにも 褪せる事無き 色彩(イロ)と想いを焼き付けて そして人々は祈るのです 大地の恵みと 始まりの翼に 感謝を捧げて
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