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『マルちゃん……』
「ホンマは俺も思ってた。大原に逢われへん位で落ち込むなんて情けないな、って」
『……そうなん?』
「うん。けどちゃうよな、それが普通なんよ」
そう、それが普通なんや。
好きな人に逢われへんくて、ツラい悲しい、寂しいって思うのは当たり前やのに。
「なぁ、大原」
『ん?なに、マルちゃん』
気づいてた癖に強がって、結局耐えられへんくなってへこむ位なら。
「……逢いたい」
『えっ……?』
「大原に、逢いたいよ」
素直になって気持ちぶつけな、何でもかんでも汲み取ってくれる訳やない。
『うん。俺もマルちゃんに逢いたい』
「大原……」
『今日、撮影終わったらマルちゃんに逢いに行く』
絶対。絶対、何があっても深夜になってもマルちゃんに逢いに行くから。
「おん、待ってる」
『待っててな』
それから大原は『スタッフさんに呼ばれたから行くわ』ってパタパタしながら通話を切った。
最後に小さく『好きやで、マルちゃん』って囁いて。
僕はテーブルに携帯を置いてソファーに仰向けに寝そべった。
寂しかったあの気持ちはすっかり何処かに飛んでった。
大原が遠い所に追いやってくれたらしい。
「……はよ、逢いたいな。楽しみや」
大原の姿を思い浮かべながら、僕はゆっくり瞼を閉じた。
(了)
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