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「えーん、お姉ちゃんばかりズルいよう。私もピンクの手帳が欲しかったのに! パパ、私の歳を間違えないで。ママ、私が好きなのはイチゴのショートケーキよ。もう嫌! みんなみんな、いなくなっちゃえばいいのに」
サエはハッと我に返りました。
眠り人形の言葉を思い出した頃には、時すでに遅し。
リエはあっという間に夢の国へ連れ去られたのです。
「きゃー、リエちゃんがいなくなっちゃった」
遅れてリエの友達も吸い込まれました。
一階では両親の叫び声が飛び交いましたが、やがて静かになりました。
今度は家の中の日用品や衣服、家具がフッと消えていきました。
次々と、次々と夢の国へ運ばれてゆきます。
すっからかんの部屋の隅で、サエは泣きじゃくりました。
そして最期には家そのものが消失し、サエはあとに残った暗闇にひとり取り残されたのです。
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