プロローグ

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「ごめんなさい。あなたには、雪、って言った方が良かったかしら?」 返答のない俺を受けて、彼女は笑顔を浮かべながらそう言い直した。 「確かに俺には雪しか見えないけど……いいなー、そういうの。羨ましい」 「あら、笑わないのね。……ありがとう」 普通だったらただの笑い話になるかもしれない。 だけど、オレにはむしろ夢をひた向きに見つめるこの娘が輝いて見えた。 「良かったら聞いてもいいかな、どんな夢なの?」 「誰にも言ったことないけど……笑わなかったあなたには特別に教えてあげる」 彼女は自分の両手を胸に当て、目を閉じた。 「私は自由に生きてみたいの。親に決められた人生なんて嫌。自分の決めた道を進みたいの――いつか、きっと!」 まだまだ幼いオレ達。 オレなんか遊ぶことばかり考えて毎日を過ごしている。 だけど、彼女は違う。 これは夢なんかじゃない。 覚悟に似た、必ずやり遂げると決めた目標。 こういう覚悟のある人間が、将来世の中を回していくのだと、幼いながらもオレは実感した。
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