2055人が本棚に入れています
本棚に追加
/107ページ
「ごめんなさい。あなたには、雪、って言った方が良かったかしら?」
返答のない俺を受けて、彼女は笑顔を浮かべながらそう言い直した。
「確かに俺には雪しか見えないけど……いいなー、そういうの。羨ましい」
「あら、笑わないのね。……ありがとう」
普通だったらただの笑い話になるかもしれない。
だけど、オレにはむしろ夢をひた向きに見つめるこの娘が輝いて見えた。
「良かったら聞いてもいいかな、どんな夢なの?」
「誰にも言ったことないけど……笑わなかったあなたには特別に教えてあげる」
彼女は自分の両手を胸に当て、目を閉じた。
「私は自由に生きてみたいの。親に決められた人生なんて嫌。自分の決めた道を進みたいの――いつか、きっと!」
まだまだ幼いオレ達。
オレなんか遊ぶことばかり考えて毎日を過ごしている。
だけど、彼女は違う。
これは夢なんかじゃない。
覚悟に似た、必ずやり遂げると決めた目標。
こういう覚悟のある人間が、将来世の中を回していくのだと、幼いながらもオレは実感した。
最初のコメントを投稿しよう!