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灰色のローブを纏(まと)った女性がPDAを泉に見せた。 『なんだお前ら、鷹山も佐藤もレア度★1じゃねーか。西条もレア度★3か。せっかくクラスメイトだから優先的に仲間にしてやろうと思ったけど、そんなクズ職業じゃ駄目だな』 ――あの女性のスキルか? 他プレイヤーのデータが見れるスキル。柚葉を連れてこなくて正解だな。 調子に乗った泉は言葉を続ける。 『西条、俺の女になるならお前、仲間にしてやってもいいぜ』 うわっ。これは……やばいな美咲キレるぞ。 「落ちつけ、おい美咲!」 オレの制止など気にもとめない。 その歩く姿の美しさに周りが息を飲む。辺りを静寂が包み込んだ。 美咲は、泉の前で立ち止まる。 「――アンタ誰だっけ?」 これは痛い。美咲の言葉は泉の心に、会心の一撃を与えたに違いない。 「アンタの顔も、名前も、全然記憶にないわ。 だいたい【勇者】だから何なの? 職業スロットで偶然当たっただけでしょ。その【勇者】としての実績は何? 知ってるかしら。 そういうのを"有名無実"って言うのよ。肩書だけのクズは腐るほどみてきたから。 私の下撲にすらいらないわっ。 アンタ邪魔ね。 もう下がっていいわよ」 うーむ。 久しぶりに美咲の女王様ぶりを見たな。仲間だと気持ちがいいもんだ。美咲の"口撃"コンボに泉はノックアウト寸前だ。 オレ達を睨みつけながら、泉は負け犬の典型的な台詞を口にした。 『お前らフィールドで遇ったら覚えとけよ』 仲間を引き連れ、泉は去っていった。
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