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『てめぇ、せこい攻撃ばかりしやがって!』
鬼の形相で睨む相手のHPバーは五分の三になっていた。
攻撃はちゃんと効いている。
相手の右脇に転がり込み、距離をとる。すでに赤い湯気は消えていた。
――時間がない。腰元の鞘に手を掛け刀を収める。
【居合】発動。
『……どうした? 逃げ回るのは終わりか? 一撃で殺してやるよ』
ジリジリと間合いを計りながら距離を調節する。
少しでも時間を稼がないと。
刀の鞘から緑色の光が漏れているということは、三十秒経過した証だ。
「お前デカイだけだろ? そんなノロマな攻撃あたりゃしねーよ。これで決めてやる!」
挑発のためとはいえ修司を真似た、慣れない台詞に恥ずかしくなる。落ち着いている証拠か?
まだ鞘の光は緑のままだ。
『居合いか。お前馬鹿じゃねーのか? 俺のグレートソードとお前の刀じゃ間合いが違う』
鞘の輝きが緑から青に変わる。もう少しだ。
「泉の腰ぎんちゃくが偉そうに語るなよ 」
『てめぇ、クソ職業が調子に乗りやがって』
言いすぎたな、もう限界か。
あと八秒……
『死ねぇぇぇ!!』
軽々と振り上げられたその刀身に炎が灯る。またスキルか?
業火を纏ったグレートソードの一撃を寸前でかわす。
空を切った鈍い風圧音。その衝撃に乗った熱風が肌を焼く。
――まだだ、早く!
再び、奴の手元から先に炎が灯り始めた。
――早く!
祈りを聞き入れてくれたかのように、刀の鯉口(こいくち)から溢(あふ)れ出た光が青から黒に!
――――今だっ!
【捨身】発動。
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