530人が本棚に入れています
本棚に追加
ガチャ……
ドアが開く音で目が覚める。
「アンタいつまで寝てんのよ!」
これは、最悪な目覚め方だぞ。一瞬で頭が働く。美咲が起こしにきたんだ。
「お、起きる、起きるよ!」
慌てて起き上がり、隣のベッドをみると他の二人がいない。
「――キャァァァァ!」
えっ!? 今度は何だ!?
「アンタなんでパンツで寝てんのよっ! は、早く着替えなさいっ!」
美咲は顔を赤くし目を背けながら、辺りの物を投げつけてきた。
おいおい、今時パンツ姿で悲鳴あげるのか。案外純情なんだな。
「は・や・くっ!」
「はい、はい」
美咲は勝手に怒りながら部屋に戻っていった。
これ以上の怒りをかうことを恐れ、素早く着替えて下の食堂に降りる。
――食堂はコーヒーの香りと焼けたパンの香ばしい匂いが充満していた。
柚葉が目に入ったが、修司と哲二は見当たらない。
「おはよう柚葉。哲二達は?」
「モガョゥ……ング……ママング……フグ……」
柚葉の前には、焼きたてのパンに目玉焼き、ソーセージにサラダ、シチュー、果物と朝からボリューム満点の料理が並べられている。
その小さい口一杯に食べ物を入れながら話しているので何を言っているのかさっぱりわからない。
"おはよう"しかわからないぞ。しかもあれ全部食べるつもりなのか。
牛乳でパンを流し込み、再び口を開いた。
「おはよう、蓮くん。哲二くんは佐伯くんの所に行ったよ。修司くんは宿屋の裏で朝稽古しているみたい。さっき掛け声が聞こえたから」
――哲二のやつ行動が素早いな。
「そうか。昨日は中々寝付けなくて寝坊しちゃったよ。まさか美咲が起こしにくるとはね」
「私は疲れていたからすぐ寝ちゃった。だから早起きだったよ。でも美咲はもっと早起きだったから、蓮、遅い遅いってずっと怒ってて、それで起こしに行ったみたい」
ん? 今、昨日の夜の事を柚葉は隠したぞ。何か言えない事情があるのか。
なんとなく切り出せずにいると哲二が佐伯と戻ってきた。
最初のコメントを投稿しよう!