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その巨大な土壁の幅は数百mもある。
壁といっても城壁の様な高さと長さ。
――しまった!
分断されたんだ。壁の向こう側の佐伯はもちろん、哲二、柚葉は接近戦に向いていない。
今から壁を回り込むにはどうすれば……
数秒の戸惑い。先に動いたのは修司だった。
「俺が行くから、こっちは二人でなんとかしろ!」
【エア・ステップ】発動。
修司は壁に向かって走り込み、ジャンプした。空中でもう二段跳び上がり霧の中に消えていく。
「蓮、前から敵が三人!」
レイピアを鞘から抜きだし構える美咲は【ホワイト・シーク】で敵のHPバーを出現させていた。
『うわっ! 三人かと思ったらこっちは二人かよ。尾崎のやついつも偉そうにしてっけど壁しくじったな』
背が高いライダース姿のスキンヘッドが手にしているのは片刃の曲刀。その柄の部分は半円状に覆われており、鍔のようになっている。
オレは美咲の前に出て、スキンヘッドを睨みつける。
奴の発言から後の壁はこの三人のスキルではないはず。
この巨大な壁を容易(たやす)く生み出すスキル、柚葉達が心配だ。
「いきなり何だ?」
緊張のためか自分で驚く程に声が震えていた。
茶色いパーカーのフードを頭まですっぽり被り、両手をポケットに入れたままの男は宙に浮いている。
こいつ武器がないのか?
浮いているのに奴が履いているのはよくあるスニーカー。柚葉と同じフローティングブーツには見えない。
『敵意丸出しだね。ご想像通り僕たちはプレイヤーキラー。早くこんなゲーム終わらせたいからね。手っ取り早くプレイヤー狩ってクリアすることにしたんだ』
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