目的

4/8
前へ
/39ページ
次へ
「ウォォォォラァァァ!! やっと開いたぜ。 騒いでんじゃねー、泣いたって、叫んだって何も解決しねーんだよ。大勢で出口突っ込んだら危ねーだろうが」 ――会場中の空気が固まった。 帯びていた熱気が冷めていくのを感じる。 「よーし。静かになったな。最初からそうしろっつうの。 俺の名前は神田修司。このゲームをクリアする最強の剣士だ。覚えとけっ!」 一体何が起きているのか、プレイヤー達は必死に理解しようとしているのだろう。 何事もなかったように会場を見まわす修司。 「おーい。蓮、哲二、美咲どこだー。迎えにきたぜ」 あいつは、馬鹿だ。 何を考えているんだ、メチャクチャ目立っているぞ。 会場中の視線が全て、オレ達三人に注がれた。 そりゃそうだよな。 さっきまでオレはあそこで戦っていたんだ。名前を覚えられていても当然だ。 「れ、蓮、ここはお前が先頭で行こうか……」 哲二がオレを前に押し出す。 パニックが治まったのは良かったけれど、この静まり返った会場の中を歩くのは恥ずかしすぎるぞ。 グイグイと哲二は押してくる。 仕方なくうつむきながら出口へと向かう。 ――あと数mで出口。 このアウェイな雰囲気から解放される。 「ちょっと待って」 ――み、美咲? 美咲は踵(きびす)を返し会場に体を向けた。 「いい、よく聞いて。 私達がゲームを攻略する。アンタ達は危ないからこの村から絶対出ないで。 余計な事はしないで。 もしクリアに関する有用な情報があったら持ってきて頂戴」 無茶苦茶だ。 大勢の前で戦ったオレ。 爆音と共に現れた修司。 女王様のような上から目線で啖呵(たんか)を切った美咲。 チーム『美咲とその下僕たち』は間違いなく全プレイヤーの記憶に残っただろう……オレはその下僕の一人として。 そしてこの後、さらなる衝撃的な事実を聞くことになる。
/39ページ

最初のコメントを投稿しよう!

530人が本棚に入れています
本棚に追加